こしばゆういちのブログ

理系院卒→ハードウェアエンジニア→HR人材開発マネージャー

問題解決研修で見えること (2) - ストーリーを語れるか

こんにちは、DHLサプライチェーン株式会社 (DSC) で、Lerning & Development Manager(日本語で言うなら、人材開発担当マネージャー)をさせていただいております。

問題解決をテーマとして扱った研修でおこりがちなこと、第2弾です。前回は、「問題」と「原因」をごちゃまぜにしたことにより起こる風物詩を取り上げました。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

今回は、もう少し先のことも見据えたうえで、また異なる風物詩を見ていきましょう。

そわそわするスペシャリスト

問題解決の手法を一通りお伝えし終えたところで、実際にグループワークをやってもらいましょう。職場の問題を洗い出し、根本原因を見つけ出して、解決策まで出してもらいます。

根本原因、解決策のパートになればなるほど、声が大きくなる方々がいます。それは、プロダクトのオーナーや、技術の専門家です。いわゆる、スペシャリストの方々です。

彼らの発言はこうです。

「それは、私たちの●●サービスを使わないのが原因だ。だから××なんていう問題が起きるんだよ」

「なぜ●●技術を使わないのか?そんな問題、簡単に解決できるのに」

もちろん、彼らが言っていることが正解なことは十分にあります。ここで考慮をしたいのは、解決策ありきのストーリーを語っていないか?です。

エレベータートークでストーリーを語る

おさらいですが、問題解決の手順は、

  1. Problem: 問題(現状とあるべき姿のギャップ)を定義する
  2. Root cause: 根本原因を探る
  3. Solution: 解決策を探る

の段階を踏みます。1から3に、順を追って考えていくことが大切。

「問題」の設定は、いろいろとできます。正しい問題の設定、そして取り組むべき優先度の高い問題となっているのでしょうか。

「問題」を1つに決めたら、そこから「根本原因」を探っていきます。いろいろな原因を考えられますが、正確に根本原因をとらえているでしょうか。

「根本原因」として、これだ、と決まった後、「解決策」にも複数の方法があるはずです。選択した解決策は、かかる労力、費用など、総合的に見て、実施に見合うものでしょうか。

このように、1から順番に、樹形図のように広がっていきます。途中で検証に違和感があったら、1つ前に戻って、再度検証すればよいのです。3の解決策(やること)を決めてかかるのは、このストーリーを正反対に語っています。

これを防止するために、私はよくお伝えしているのは、エレベータートークを作ること。社長に、エレベーターに乗ってから降りるまでの数秒で、取り組む問題解決をスムーズに説明できるかを検証します。

私たちは 問題 を解決する必要があります。 あるべき姿 であるべきところ、現状、 現状 となっています。その原因は、 根本原因 です。それを解決すべく、 解決策 をします。

さて、社長に説明してみよう

しっくりこなかったら、再度検証をしてた方がよさそうです。

ここで強調をしておきたいのですが、私はプロダクトや技術のプロの方々を批判しているのでは絶対にありません。お客様が使う素晴らしいサービス・プロダクトを、高い技術を持って送り出す、会社の生命線です。だた、「素晴らしい我々のサービスを、なぜ営業はうまく売り込めないのだ?」ともし思っているようであれば、もしかしたらお客様の抱える「問題」を、正確に捉え切れていない可能性があるということは、少し気にかけたほうが良いのかもしれません。

DHLのFirst Coiceツール

さて、先ほどの問題解決のストーリーですが、DPDHLはこれをPRS (Problem - Root cause - Sokution) 法と呼び、First Coiceというプログラムの1パーツとして取り入れています。

www.dhl.com

First Coiceは、「私たちが継続的改善を行い、お客様のよりよい生活を実現する」という明確な目標を掲げ、私たちのビジネスのHowの部分を定義しています。「1番に選ばれる」と訳すことができるこのツールは、お客様にとって、DPDHLがそうであってほしい、という想いが込められています。

そしてその内容は幅広く、日々のパフォーマンスをチームで話す「パフォーマンス・ダイアログ」、現場で起こっていることを観察する「GEMBAウォーク」など、多種多様。その実施を支えるためのトレーニングやテクノロジーを、DPDHLは持っています。

このように、DPDHLでは日々の問題解決を仕組みとして取り組んでいるのです。

問題解決研修で見えること (1) - 「情報共有ができていない」「人員が足りない」の風物詩

こんにちは、DHLサプライチェーン株式会社 (DSC) で、Lerning & Development Manager(日本語で言うなら、人材開発担当マネージャー)をさせていただいております。

人事の道を歩み始めて約8年。トレーニングのファシリテーションを多く経験してきました。その中で、一番多く取り扱ってきたのは、若手向けの問題解決です。

私は2社しか経験していませんが、問題解決はどちらの会社でも、新卒者向けのトレーニングに取り入れられていました or 私が取り入れていました。おそらく、どの会社であっても、今後の未来を担うホープに対して身に着けてほしいスキルの上位に入ることでしょう。

今回は、そのトレーニングのファシリテーションを何年も経験した中で、私が一番気を付けていることを共有したいと思います。ここで紹介することは、皆さんが簡単に陥りやすい思考サイクルと同じかもしれませんよ。

まずは問題解決手法のおさらいから

以前、「DXを後悔する方法」という記事を書かせていただいたのですが、その中で問題を解決するフレームワークを紹介しました。そこでは、「デザイン思考」と「王道の問題解決手法」の2つを解説しています。今回、この記事で扱うのは、後者の王道の問題解決です。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

オトナ向けトレーニングは、一方的な講義で終わることは決してありません。成人学習の理論に基づき、必ず、グループワーク、アクティビティ、ロールプレイングなどを通じて、実感したり、アウトプットしてもらうことが大切です(仮にそうじゃないトレーニングを皆さんがやっているとしたら見直しましょう)。

問題解決も、そのフローに従い、参加者の仕事現場の問題を当てはめていきながら進めていきます。ということで、まず初めに、「現場の問題を挙げてみましょう」というアクティビティから始まります。

「現場の問題」で聞き飽きたトップ2

個人で書き出してもらったり、グループでブレストしてもらったり、何でもよいのですが、問題を挙げてもらう中で、私がもう聞き飽きた2つがあります。第1位は「情報共有ができていない」、そして第2位は「人員が足りない」です。

もうね、これが出てきたときは、「あー、今年も出やがったな」と、春先の花粉、もしくは初夏の蚊のような気分になります。もう、一種の風物詩です。

結論から言うと、「情報共有不足」と「人員不足」は、「問題」ではありません

「問題」と「原因」を切り分けろ

「うちは情報共有が全然できていないんです!」とプンスカしている参加者に、こう聞いてあげましょう。「では、どのようなときに、『情報共有ができていない』と思うのですか?」と。

そうすると、いろいろな回答が出てきます。

お客様の他社事例が欲しい、という要求に対して、すぐに回答ができなくて、怒られることが多い、とか

固定資産簿が全然更新されていないと、いつも監査で引っかかる、とか。

そして、こう言ってあげるのです。「今、おっしゃったことが、そもそも解決したい問題ですよね?」と。

人員不足についても、同じようなことを聞くと、生々しい、真に解決したい問題が出てきます。

情報共有が不足していることと、人員が不足していることは、発生している問題の1つの原因です。しかも、それが根本的に考慮すべき原因ではない可能性さえあります。

問題解決のフローでは、問題を設定した後に分析する、原因分析で初めて登場すべき事柄なのです。解決したい本質的な問題の所在は、そこじゃないぞ、と参加者には丁寧に導いてあげる必要があるのです。

どうすればこの風物詩に対処できるか

今まで私も、この風物詩に対しては、その都度、「出てきては個々に質問する」を繰り返していましたが、最近、こうすればいいんじゃないかと思いつくことがあります。

「ヒト・モノ・カネを問題にするな」

です。

"情報"は、無形の資産ですので、モノに入ります。そのポイントを含めて、ヒトが足りない、モノが足りない、カネが足りない、を問題に挙げるのをいったんやめてもらうのです。ここで、カネが初登場しましたが、おそらく管理職以上の方がいらっしゃると、予算などに責任を持ち始めるので出始めるでしょう。

本来、このヒト・モノ・カネの分類は、原因分析のステップで「ロジカルに原因分析する」という際に研修でも登場しうるものです。最近は、適切な問題設定を行ってもらうためにも、ちょっと先んじて出してみるのがいいかも、と思っています。

とはいえ、実際に問題出しのワークをしてもらう前に説明しても実感が湧きにくいので、少しやってもらって、風物詩が始まったら、全体のワークを止めてもらって「いったん説明を聞いていただいていいですか?」とするのが、参加者にもㇵッとしてもらえる段取りにすると、良いかもしれません。

以上、問題解決の研修でよく見る風物詩を書いてみました。書いているうちに、もう1つ思い出したので、タイトルに (1) とつけました。また改めて、(2) も書きたいと思います。

HRチームのデジタライゼーション意識が向上した3つの理由 (3) - Whatの前に、Whyを語れ

こんにちは、DHLサプライチェーン株式会社 (DSC) で、Lerning & Development Manager(日本語で言うなら、人材開発担当マネージャー)をさせていただいております。

過去、2回にわたり書かせていただいた、「HRチームのデジタライゼーション意識が向上した3つの理由」、ついに最後の3つ目です。

…でも、実は最後の「『覚悟せよ+みんなできるよ』って伝えること」に関しては、あまりここで詳細に書くことがありません。なぜなら、過去のブログでお伝えしている内容を、チームに伝えたよ、ということであり、あまりダイナミックなストーリーは無いのです。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

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以上、4つのことを、チームの前でお話ししました。

DXをする理由は、会社が、日本が、生き残るため

DXするのが目的じゃない、課題を解決するんだ

Whatの前に、Whyを語れ

「デジタライゼーションが急務」。この言葉は、頻度の差はあれど、どの会社でも聞く言葉です。なのに、なぜ進まないのだろうか。小柴の考える1つとしては、「Whyを語れていないから」「Whyが伝わっていないから」

デジタライゼーションは、それ自体が目的とはなりません。何か大きな課題や、もっと伸ばしていきたい事柄に対して、「どのように (How)」「何を (What)」するか、のツールでしかないのです。HowとWhatを軸として、社員に「とにかくデジタライゼーションをやれ」といって、みんな動いてくれるのでしょうか。多くの場合、上の空になってしまうことでしょう。

会社の課題として、デジタライゼーションがあがっている。でもそれは、「なぜ (Why)」行うのでしょうか。私の記事第1弾では、「日本として」「日本企業として」取り組まなければならない理由を紹介しました。少子高齢化労働人口の減少、団塊世代の一斉退職、情報科目の必修化。。様々な観点からWhyを考えました。では、皆さんの会社として、取り組まなければいけない理由は何ですか。もっと掘り下げると、”部”として、”チーム”として、なぜ取り組まないといけないのでしょうか。

このように、Whyから出発して人々をアクションに結び付けていくことを、「ゴールデンサークル理論」といいます。下の動画では、Simon Sinekが、その重要性を教えてくれています。

www.ted.com

わくわくするメッセージを発信しよう

伝えるべきWhyには、2つの種類がある、と私は思っています。「このままではビジネスが立ち行かなくなる」という、厳しい外部的な要因からくるものが1つ。社員に覚悟をもってもらうという意味で非常に重要ですが、”恐怖””不安”で終わりかねません。もう1つ重要なWhyは、社員一人一人の内側を刺激するWhyです。

デジタライゼーションは、自身の仕事を効率化します。

デジタライゼーションでプロセスを効率化させると、関係者から感謝されます。

デジタライゼーションは、できることの幅を広げ、キャリアの幅も広げます。

デジタライゼーションは、結果がすぐに返ってきます。

わくわくするWhyを伝えることは、自ら取り組んでみようという動機付けを生むことでしょう。あなたの会社、部署、チームで、「わくわくWhy」を作るとしたら、どんなメッセージになりますか。

結局、何をすればよいのか

ここまで3回にわけて、DHLサプライチェーン人事部の、デジタライゼーション意識が向上した理由を、私なりに考えて、まとめてみました。

でも、もしかしたら、こんなこと思う人もいるかもしれません。理系(しかもコンピューター・サイエンス)出身の小柴だったからできたことなんじゃなかろうか、と。デジタライゼーションという命題を課せられていたり、これから本気に取り組まないとと思っている中、そんなことできるのか、と。

だとしたら、話は非常に簡単です。偉そうなこと言ってごめんなさい、ですが、まずあなたがデジタライゼーションを使いこなすのです。あなたがマネージャー、はたまた社長だとしたら、猶更です。

大学に入れ、という意味ではないです。世の中、Youtubeなどでそこら中に教材はあふれていますし、試す環境はすぐそこにあります。まずは自分のタスクをデジタライゼーションして、他の皆さんへ波及させていきましょう。必ずや、みんながついてきて、意識向上に繋がると、私は信じています。

 

HRチームのデジタライゼーション意識が向上した3つの理由 (2) - 「うぉー!できたぁ!」を巻き起こせ!

こんにちは、DHLサプライチェーン株式会社 (DSC) で、Lerning & Development Manager(日本語で言うなら、人材開発担当マネージャー)をさせていただいております。

前回のブログに引き続き、HRチームのデジタライゼーション意識が向上した理由、というのを書いていきたいと思います。

前回は1つめの理由として、「上司がアシストをしたこと」について書きました。どのようにして活動がキックオフしたのか、キーとなる人物(自分のことをこう言うのはどうなのと思いつつ笑)に何をお願いしたのか、そしてモチベーションを保ったのか。非常に上から目線の記事となっております。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

今回は、2つ目の理由、「小さな成功を祝ったこと」。これは、実際に担当者の業務をデジタライゼーションするにあたり、その方々のモチベーションをどう向上していくのか、ということです。

すぐできることを、あえて遠回り

前回申し上げた通り、Aさんのとある業務のデジタル化をサポートし始めた小柴、その業務とは。

社内で社員の異動を行う際、新しい上司になる予定のマネージャーは、自身のまた上司、上上司の承認をとる必要がありました。過去、マネージャーは「異動申請書」PDFに必要事項を記入し、上司と上上司の電子署名をもらって、担当のHRBP(HRビジネスパートナー)にメールで送付していました。

あれ、見たことあるな、と思った方は、前回の私の記事を読んで頂いてるってことです。そう、前回の記事で私がした自動化(社内の英語学習プログラム参加者申請)の、自動化前のフローの文章をコピペして手直ししただけです。まぁ、だからこそ、私の上司は「同じ仕組みでいける!」と思ってくれたのでしょう(ありがたや)。

そんなわけで、一番手っ取り早い方法は、私の自動化テンプレートを「はいっ」とお渡しして、軽く修正することなのですが、あえて私はそうしませんでした。

1つに、実活用フェーズに移った際に、担当者自身で問題解決ができなくなるから。細かい仕組みは私しかわからないわけなので、途中でエラーが起きた際には、すぐに小柴に回ってくることになります。そんなの、嫌だったのです、単純に笑。

2つに、担当者が自分で本当はできることを広げられなくなるから。前回の記事でも記載の通り、あくまで、業務の自動化をしたり、考えたりするオーナーは、今までの担当者です。なので、できあがっていく過程をあえて経験することで、「あんなこともできるんじゃないか」と、想像を膨らませられるようにしてほしかったのです。

「うぉー!できたぁ!」の場づくり

まず私が"一緒に"やったことは、これです。Formsで書き込まれた内容を、SharePointにおいてある管理Excelに書き込む

これ、本当に出発点としてはオススメ。「申請」と名がつく業務フローにおいて、可用性が一番高い。しかも、何も知らない人でも、30分もあれば環境構築から実際に動くところまで画面を見ながら一緒にできて、その仕組みも十分に理解ができます。

そして何より効果的なのは、「え?もうできたの?マジかよ!」という、感動と成功体験を短時間でプロデュースできることです。

「うぉー!できたぁ!」と思わせたら勝ちです

ちょっとかじってる方からは、

SharePointサイトでも申請フローって作れるじゃないですか」

SharePoint Listってのがあってね、その方が管理能力が高くて…」

「信頼性を保つためにも、まずはデータの構造を…」

なんて声が聞こえてきそうですが、ダメダメ。手っ取り早く「うぉー!できたぁ!」を体感してもらうためには、みんな知ってるFormsとExcelで決まりです。データのあるべき論を語るのは、後回し(でもこれも重要なので、別途記事書きたいかも…)。

「できたぁ!んじゃあ、次は〇〇をやってみましょうか!」

と、小さいな成功を積み重ね、範囲を広げていったAさんが今できることは、条件分岐、For Each、文字列操作、そして配列変数。「すごいですね!今やってることって、大学の情報科1年生がやっていることですよ」と言えたのは、少しオーバーかもしれないけど、事実です。

内発的動機づけと成功体験

社員に、何かに対して取り組む動機づけをする手法として、外発的動機づけと内発的動機づけの2種類があるのは、結構知られている話だと思います。今回、Aさんの立場からすると、私の上司のアシストにより「一緒にやってみて?」という外発的動機付けから始まったのです。

ここで、私が果たした重要な役割は、内発的動機づけを成功体験の積み重ねで育んだことなんじゃないかな、と思います。Aさんをはじめ、今チームでいろいろなデジタル化を自ら取り組んでいるチームメイトからよく聞くのは、

「意外と簡単にできるんだと思いました」

「Power Automateが楽しい」

「次、〇〇を、こういう仕組みで実現しようと思いまして、、」

という発言。外発的動機だけでは生まれない発言だと思います。今回、記事を書いていて、セオリー通りな説明できることってあるんだなぁとしみじみしています。どうやらエンハンシグ効果、っていうらしいですね。

外発的動機付けがキッカケで内発的動機付けが高まり、モチベーションが上がることを、エンハンシング効果といいます。

外発的動機付けを内発的動機付けに変化させる方法として「褒める」という方法があります。

mitsucari.com

ということで、やっと2つ目の記事を書き終えました。3つ目、うまく書けるかな…。

ノーコード開発ができるのにしないのはもったいない!

こんにちは、DHLサプライチェーン株式会社で、Lerning & Development Manager(日本語で言うなら、人材開発担当マネージャー)をさせていただいております、小柴です。DXをテーマとしたブログ、4回目です。

(なぜHRチームのデジタライゼーション意識が向上したかシリーズは、また別途書きます)

今回は、「Microsoftの人ですか?」みたいな記事を書きます。

えらそうに書くけど、過去の記事の振り返り

第1回のブログで、DXとは「新しい価値を創造すること」と、「今までのコストを下げること」の2つである、と紹介しました。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

そして第2回のブログでは、意外にも皆さんがDXをすでにやっていること、重要なことはできることを知っていくことだ、と紹介しました。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

今回は、主に「コストを下げる」活動の中で、皆さんが知っておいた方がいい「できること」。それは、ノーコード開発です。

ノーコード開発って何?

さっそく出てきたキーワード。ノーコード開発とは何でしょうか。簡単に言うと、私たちが想像する、英語の暗号を羅列するプログラミングということを、全く、もしくはほとんどすることなく、アプリケーションやWebサービスを開発する手法です。

今、小学校のプログラミング教育でも、このノーコード開発(に近いもの)を取り入れているところが多いようで、子供でも分かりやすく扱えるものなのです。文部科学省はプログラミング教材としてScratchを推奨。「画面に表示されたロボット君を、右に10歩動かして」「壁に当たったら、回れ右して」など、直感的な命令文でプログラムを作成することができます。

scratch.mit.edu

では、大人の私たちもSCRATCHから、、始めてもいいかもしれませんが、すでに業務をおこなっている私たちは、「目の前にあるのにも関わらず、まったく使えていない」ツールである、Microsoft Power Platform、特にPower Automateを使うことを個人的にはお勧めします。

【注意】ここから先、Microsoft Power Platformの話が続きますが、お仕事でMicrosoftのツール(OutlookExcelなど)を使っていて、Power Platformが使えるライセンスであること、が前提です。Google Workplaceがメインだという方々は、Googleの中でそれにほぼ相当するツールがあると思うので、調べてみましょう。そして何より大事なのは、会社のポリシーを遵守することなので、Power Platformの利用自体が会社としてOKなのかは、確認したほうがよいでしょう。

Power Platformって何?

Microsoftは、そのページでこのように言っています。

Power Platform でデータの分析、プロセスの自動化、アプリケーションや Web サイト、仮想オペレーターを構築をすることで、コスト削減やイノベーションを加速することができます。

powerplatform.microsoft.com

Power Platformは、(実はほかにもあるけれど、)以下の3つの大きなツールの集合体です:

  1. Power BI
  2. Power Apps
  3. Power Automate

もしかすると、Power BIというのは、言葉だけ聞いたことがある人もいるかもしれません。「ダッシュボードでの情報の見える化を、Powser BIで実現した」なんて言葉、社内で聞いたことあったりしますか?そう、Power BIは、社内のデータを分析し、ダッシュボードで可視化して、効率的な意思決定に役立てよう、というものです。

Power Appsは、自分でカスタムアプリを作れる、というもの。Power BIとPower Appsは、「ローコード開発」と呼ばれ、Excelの関数に毛が生えた程度のちょっとしたコーディングが必要です。

私が入り口としてオススメしておきたいのは、3つめのPower Automate。自身のリアルな業務の流れを、そのままツールに落とし込むことができるのです(うまくいけば)。例えば、

  1. 【業務報告】から始まるメールを受け取ったら、
  2. その内容を、メール受信日時、送信者とともに、Excelの記録簿に書き込んでおく

なんていう流れを、視覚的に、落とし込むことができます。

皆さんが思っているより簡単です

「えー、難しそうー」とお思いの皆さん。多分、皆さんが思っている、1/10の労力と時間で習得し、実現できると思います。

まずは、簡単な「お遊び」から始めることをお勧めします。私は社内で、「Hey Yuichi」という件名のメールが届いたら、「ありがとう」と返信するAutomateを作ったよ、とチームに紹介して、それがいかに簡単にできるか、という布教活動から始めました。

社内で「お遊び」フローを紹介する小柴

最近は本当に便利な時代になりまして、Youtubeに学習コンテンツがゴロゴロ転がっています。ぜひ一度、Microsoft Power Platformが何なのか、そしてというにPower Automateがいかに自身の業務の自動化に役立つのか、を調べてみてください。

あー、でも、第3回目のブログで書いたように、「その業務はそもそも必要か」ということも、検証してくださいね、まずは。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

以上、DHLなのに、Microsoftの人みたいな記事となりました!

HRチームのデジタライゼーション意識が向上した3つの理由 (1) - それは、上司の一言から始まった

こんにちは、DHLサプライチェーン株式会社 (DSC) で、Lerning & Development Manager(日本語で言うなら、人材開発担当マネージャー)をさせていただいております、小柴です。DXをテーマに、記事を数個、書かせていただきました。

ドイツポストDHLグループ (DPDHL) では、毎年Employee Opinion Survey (EOS) と呼ばれる、社員意識調査が行われています。DPDHLが掲げるStrategy 2025に基づき作成された質問項目は、我々が目指すDNAの浸透や、エンゲージメント、チームワークなど、その内容は多岐にわたります。全世界にいる55万人以上の従業員に対し、同じ質問項目で一斉に行われます。いわば、社員から会社への通信簿、ですね。

www.dpdhl.com

2022年に行われた調査で、Japan HR Teamは「デジタライゼーション」の項目で、そのポイントを20%と、大きく向上させることができました*1

なぜそんなことができたのか?HRデジタライゼーションの取り組みを半年間リードして振り返ると、大きく3つの理由があるように思います。

  1. 上司たちがアシストしたこと
  2. 小さな成功を祝ったこと
  3. 「覚悟せよ+みんなできるよ」って伝えたこと

3はデジタライゼーションに特化した理由付けのように思いますが、1, 2に関しては、「上司の役目」「モチベーション向上と維持」という、もっともっと大きなことに繋がります。

今回の記事では、1つめの「上司たちがアシストしたこと」について、語ってみようと思います。

(本当は全部1つに書こうと思ったのですが、長くなってしまったので分割することにしました💦)

それは、上司の一言から始まった

きっかけはちょっとしたことでした。

入社して3カ月が経ったくらいだったでしょうか。社内の英語学習プログラムの参加者を募るにあたり、参加したい社員は自身の上司の承認をとる必要がありました。過去、参加希望者は「参加申請書」PDFに必要事項を記入し、上司の電子署名をもらって、HRにメールで送付していました。

「えーっ、そんなの自動化したいぜ!」と思った小柴は、Power Automateの仕組みを使い、申請→上司の承認→管理の流れを自動化したのです。

正直、その時思っていたのは、単に自分の稼働とミスの可能性をできる限り低減したいってこと。これ以上のことは特に考えていませんでしたが、これを「自動化してみましたー」と上司に伝えたところ、

「そんな仕組みが、自分で作れるのはすごい!…あっ、そうだ。Aさんの##っていう業務、膨大な承認行為の管理で大変なんだよね。同じような仕組みが使えるように、サポートしてあげられません?」

と言われ、他の業務の自動化にも乗り出すことにしたのです。

ここで良かったなと思ったのは、「Aさんの業務を自動化してあげて?」ではなくて、「同じ仕組みが使えるように、Aさんをサポートしてあげて?」というアシスト。前者だった場合、完全に私はパンクしていたことでしょう。あくまで、業務の自動化をしたり、考えたりするオーナーは、今までの担当者。私は、新しいテクノロジーを使い、業務が効率化するように、サポートをする役目を上司からお願いされたのです。

最近よく聞く、コーチング的なことをしてたってわけです

最初は週に1回くらいの割合で1Hのサポートをしていましたが、最初の業務自動化を無事終えると、段々とその頻度は減っていきました。その自動化が無事に終わり、めでたしめでたし、になったから?いいえ、違います。業務の自動化を自分で考えてできるようになり、ほかの自動化にも自ら取り組めるようになったからです

そして、いつの間にかHRチームでできたのは、「小柴塾」。Aさんがどうやら自動化したらしいぞ?ということで、他の方も聞きに来るようになり、自分で自動化に取り組み始めました。そして今では、そのAさんも、チームメンバーに「こんなこともできるんじゃないかな?」なんて話をしていると聞きます。

APAC HR Headとの会議でとつぜん振られた話

そしてある日のこと。今度は、私の上司の上司から、APAC HR Headとの会議があって、そこに出席してほしい、と言われたのです。

現状の日本のトレーニングの状況や今後の計画など、会議に臨むためにいろいろな資料作りをして、私の上司の上司(Japan & Korea HR Head)が、私の上司の上司の上司(APAC HR Head)に説明をしている場に出席。そこで私が発言をすることはほぼなかったのですが、最後にその瞬間は訪れました。

今、日本ではDegitalizationを頑張ってる。小柴さん、いる?説明して?

エッΣ(゚□゚;)と思ったのは一瞬、先ほどの小柴塾の話などをお伝えすると、「続けてやってほしい。そして他国にも展開できるようなものがあれば共有してほしい」という言葉をもらい、その会議は終えました。その瞬間、何とも清々しい、「俺、いいことしてんじゃん」感を覚えたのです。

上司は、部下のセールスマン

そんなわけで、HRチームのデジタライゼーション意識が向上した理由の1つめは、「上司たちが良いアシストをしたこと」でした。

でもね、私、ここで取り上げたいのは、デジタライゼーションうんぬんということより、私の上司たちがした、普遍的な素晴らしい行動のことです。部下としての私を、他の人に売り込んだのです。私の上司はほかのチームメンバーに、そして私の上司の上司は、そのまた上に、私を売り込みました。

部下の強みを、チームメンバー間で売り込むと、そのチームはその強みを最大限お互いに使って、最強のチームになることができます。また、チーム外でも社内・社外に「こういう奴がうちにはいるんだ」と部下を売り込むことは、部下の自信向上に繋がり、部下に良い刺激を与えることができます。上司は、部下のセールスマンであるべきです

私が考える究極の形は、部下を売り込んで、他のポジションや、場合によっては他社に送り出すこと。一時の戦力ダウンは避けられないですが、長期的な目線で上司や会社に返ってくるメリットを考えればその効果は何十倍も何百倍もあります。売り込まれた部下は、送ってくれた元上司を絶対にサポートします。そして、いろいろな部署や会社にコネクションがある人の強さは、誰もが知っていることでしょう。

ちょっと大きなことを書いてしまいましたが、私は上司たちの的確なセールスにより、チームのデジタライゼーションを高め、そして私も自信を高めることができたのです。上司にはめっちゃ感謝です!

これでようやく、3つのうちの1つを書きました。なんかよくまとまってなかったらごめんなさい。ほかの2つも、追って書きたいと思います。

*1:EOSでは社員は5段階評価を各項目ごとに行います。ここでいう「ポイント」とは、1が"そう思わない・悪い"、5が"そう思う・良い"とするならば、4と5と回答した社員の割合です

How to regret from doing DX

Ah!!! It shouldn't be like this!

Hello, I'm Yuichi Koshiba, Learning & Development Manager of DHL Supply Chain Japan. For the past 2 times, I have posted a blog related to DX.

yuichi-koshiba.hatenablog.com

yuichi-koshiba.hatenablog.com

Have you been motivated to go with DX? Ok, now I'll share some ways to regret from doing DX based on my passed experience or what I've seen.

The 2 best way to quickly regret

The 2nd best way is to start from the task you really want to quit. I know that you are busy everyday with many tasks. Some of them might be what you cannot find the reason to do. You should try to DX them.

And, the best way is to implement famous system without thinking anything. The more expensive, the better features, and more you likely to regret. These days the advertisement of HRIS (Human Resource Information System) can be found anywhere. You should think nothing, but implement it.

Frameworks to resolve problems

Why the above 2 ways are the best way to regret? As I posted before, DX has 2 aspects, "to create new values" and "to reduce costs." These activities are both commonly doing problem solving. Let's take a look at some frameworks of them.

Problem solving framework to create new values

To create values is an activity to find unfamiliar or non-past cases problems, and solve it with new method. Finding that kind of problem itself sounds so difficult and no one can do unless they are super flexible professional group, however there some framework we can refer to. One of them is design thinking. The framework is introduced by IDEO, one of the consultant famous with their numerous outcomes in the area of creating new values.

designthinking.ideo.com

Please refer to the link above for the details, but I want to stress out here that they are starting with "empathize." To define a problem they are going to tackle in, they deeply empathize to users. The way is to interview users many many times, or they sometimes be a user by themselves and have a deep empathizing. After defining the problem, they ideate the way to solve, prototype it, and test it.

Problem solving framework to reduce costs

It is quite obvious that this activity happens because we know that there is a problem which is a cost that should be reduced. The framework to be adapted will be the most popular problem solving method, you can find everywhere in some books or trainings.

  1. Define problem to be solved.
  2. Investigate true cause.
  3. Find solution.
  4. Set Action plan, and review.

What we can find from these framework

Now, when can DX be adapted in these framework? Is it from the very first time you decide to solve some problem? Well, DX is just one of the solutions. In the frameworks we have seen here, you can find that the timing to think of solutions is quite in later stage. You have plenty things to consider before starting DX. Is the task that you really want to quit worth to be solved by DX? If you have a plenty of budget to implement expensive DX system, that's a very happy situation. However, what do you want to resolve by that? The best way to regret is to consider nothing of these.

Are you doing something worth doing?

In one of my favorite comedy show broadcasted in TV, 2 ladies are acting as a factory worker standing in some production line. One of the ladies says, "Now, you put the screw here first. Right after that, I'll unscrew it."

Everyone shouts "It doesn't mean anything!" But, if you are doing something which doesn't mean anything, it means that you are doing the same comedy. If you are making some PPT that no one checks after your hard work, I recommend you to throw the work away before you think how you can DX it. However if you are willing to keep doing your comedy show, you should challenge to DX it.

Ah, for your reference, some of the book is saying that 80% of your task can be quit.

www.amazon.co.jp

So, you want to regret from doing DX? Then you should try what I've recommended!