こしばゆういちのブログ

理系院卒→ハードウェアエンジニア→HR人材開発マネージャー

問題解決研修で見えること (1) - 「情報共有ができていない」「人員が足りない」の風物詩

こんにちは、DHLサプライチェーン株式会社 (DSC) で、Lerning & Development Manager(日本語で言うなら、人材開発担当マネージャー)をさせていただいております。

人事の道を歩み始めて約8年。トレーニングのファシリテーションを多く経験してきました。その中で、一番多く取り扱ってきたのは、若手向けの問題解決です。

私は2社しか経験していませんが、問題解決はどちらの会社でも、新卒者向けのトレーニングに取り入れられていました or 私が取り入れていました。おそらく、どの会社であっても、今後の未来を担うホープに対して身に着けてほしいスキルの上位に入ることでしょう。

今回は、そのトレーニングのファシリテーションを何年も経験した中で、私が一番気を付けていることを共有したいと思います。ここで紹介することは、皆さんが簡単に陥りやすい思考サイクルと同じかもしれませんよ。

まずは問題解決手法のおさらいから

以前、「DXを後悔する方法」という記事を書かせていただいたのですが、その中で問題を解決するフレームワークを紹介しました。そこでは、「デザイン思考」と「王道の問題解決手法」の2つを解説しています。今回、この記事で扱うのは、後者の王道の問題解決です。

yuichi-koshiba.hatenablog.com

オトナ向けトレーニングは、一方的な講義で終わることは決してありません。成人学習の理論に基づき、必ず、グループワーク、アクティビティ、ロールプレイングなどを通じて、実感したり、アウトプットしてもらうことが大切です(仮にそうじゃないトレーニングを皆さんがやっているとしたら見直しましょう)。

問題解決も、そのフローに従い、参加者の仕事現場の問題を当てはめていきながら進めていきます。ということで、まず初めに、「現場の問題を挙げてみましょう」というアクティビティから始まります。

「現場の問題」で聞き飽きたトップ2

個人で書き出してもらったり、グループでブレストしてもらったり、何でもよいのですが、問題を挙げてもらう中で、私がもう聞き飽きた2つがあります。第1位は「情報共有ができていない」、そして第2位は「人員が足りない」です。

もうね、これが出てきたときは、「あー、今年も出やがったな」と、春先の花粉、もしくは初夏の蚊のような気分になります。もう、一種の風物詩です。

結論から言うと、「情報共有不足」と「人員不足」は、「問題」ではありません

「問題」と「原因」を切り分けろ

「うちは情報共有が全然できていないんです!」とプンスカしている参加者に、こう聞いてあげましょう。「では、どのようなときに、『情報共有ができていない』と思うのですか?」と。

そうすると、いろいろな回答が出てきます。

お客様の他社事例が欲しい、という要求に対して、すぐに回答ができなくて、怒られることが多い、とか

固定資産簿が全然更新されていないと、いつも監査で引っかかる、とか。

そして、こう言ってあげるのです。「今、おっしゃったことが、そもそも解決したい問題ですよね?」と。

人員不足についても、同じようなことを聞くと、生々しい、真に解決したい問題が出てきます。

情報共有が不足していることと、人員が不足していることは、発生している問題の1つの原因です。しかも、それが根本的に考慮すべき原因ではない可能性さえあります。

問題解決のフローでは、問題を設定した後に分析する、原因分析で初めて登場すべき事柄なのです。解決したい本質的な問題の所在は、そこじゃないぞ、と参加者には丁寧に導いてあげる必要があるのです。

どうすればこの風物詩に対処できるか

今まで私も、この風物詩に対しては、その都度、「出てきては個々に質問する」を繰り返していましたが、最近、こうすればいいんじゃないかと思いつくことがあります。

「ヒト・モノ・カネを問題にするな」

です。

"情報"は、無形の資産ですので、モノに入ります。そのポイントを含めて、ヒトが足りない、モノが足りない、カネが足りない、を問題に挙げるのをいったんやめてもらうのです。ここで、カネが初登場しましたが、おそらく管理職以上の方がいらっしゃると、予算などに責任を持ち始めるので出始めるでしょう。

本来、このヒト・モノ・カネの分類は、原因分析のステップで「ロジカルに原因分析する」という際に研修でも登場しうるものです。最近は、適切な問題設定を行ってもらうためにも、ちょっと先んじて出してみるのがいいかも、と思っています。

とはいえ、実際に問題出しのワークをしてもらう前に説明しても実感が湧きにくいので、少しやってもらって、風物詩が始まったら、全体のワークを止めてもらって「いったん説明を聞いていただいていいですか?」とするのが、参加者にもㇵッとしてもらえる段取りにすると、良いかもしれません。

以上、問題解決の研修でよく見る風物詩を書いてみました。書いているうちに、もう1つ思い出したので、タイトルに (1) とつけました。また改めて、(2) も書きたいと思います。